2026.05.18

食医食研究室|

腸活って、何を食べればいいの? ― 腸内環境と食事の研究から考える ―

食医食研究室 腸活 がん予防

腸活って、何を食べればいいの? ― 腸内環境と食事の研究から考える ―

食や健康について、皆さんからさまざまな疑問やお悩みが寄せられます。

食医食研究室では、そんな身近な疑問をテーマに、国内外の研究や科学的知見をもとに読み解いていきます。

第三回目のテーマは、

「腸活って、何を食べればいいの?」

腸内環境を整えるために、食事を意識している人も多いのではないでしょうか。

「ヨーグルトを食べればいいの?」

「食物繊維なら何でもいいの?」

「結局、何を食べればいいの?」

研究から、いま分かっていることを見ていきましょう。

 
ヨーグルトや発酵食品を食べればいいの?

「腸活」と聞くと、ヨーグルトや納豆、キムチなどの発酵食品を思い浮かべる人も多いでしょう。

実際、発酵食品と腸内環境については、人を対象とした研究も行われています。

健康な成人を対象としたランダム化試験では、発酵食品を多く摂る食事を続けたグループで、腸内細菌の多様性が高まり、いくつかの炎症に関連する指標が低下したことが報告されています。

ただし、発酵食品を食べれば、そこに含まれる菌がそのまま腸に住みついて「善玉菌になる」というほど単純ではありません。

腸内環境は、一つの食品だけで決まるものではないからです。

ヨーグルトや納豆などを取り入れることも腸活の一つですが、「これさえ食べれば腸内環境が整う」という食品があるわけではありません。

そこで、もう一つ注目したいのが、腸内細菌のエサとなる食物繊維です。

 
食物繊維なら、何でも同じ?

食物繊維は一般的に、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」に分けられ、それぞれ特徴があります。

水溶性食物繊維には、腸内細菌によって利用されやすいものが多くあります。

腸内細菌がこうした食物繊維を発酵すると、酪酸などの「短鎖脂肪酸」がつくられます。

短鎖脂肪酸は、腸のバリア機能や代謝などとの関係から研究されています。

水溶性食物繊維は、海藻、果物、豆類、もち麦などから摂ることができます。

一方、不溶性食物繊維には、便のかさを増やし、排便を助ける働きがあります。

野菜、きのこ、豆類、穀類などに多く含まれています。

では、便秘だから不溶性食物繊維をたくさん摂ればよいのでしょうか。

そう単純ではありません。

便秘にもさまざまなタイプがあり、不溶性食物繊維を増やすだけでは改善しない場合があります。

人によっては、お腹の張りや不快感が強くなることもあります。

また、厳密には「水溶性か不溶性か」だけで腸内細菌への作用が決まるわけではありません。

腸内細菌によって発酵されやすいかどうかも重要です。

健康な成人2,099人、64の研究をまとめたメタ解析では、食物繊維を摂ったグループでビフィズス菌や乳酸菌が増加しました。

一方、腸内細菌全体の多様性には明確な変化がみられませんでした。

つまり、食物繊維も、「たくさん摂ればよい」のではなく、種類を偏らせず、さまざまな食品から摂ることが大切です。

 
結局、何を食べればいいの?

食物繊維は「たくさん摂ればよい」というものではなく、水溶性と不溶性の両方を、さまざまな食品から摂ることが大切です。

水溶性と不溶性の食物繊維について、一般に「1:2程度のバランスがよい」と紹介されることがあります。

ただし、これはすべての人にとって「腸に最適」と科学的に確立された比率ではありません。

便通や腸内環境には個人差もあるため、数字にこだわりすぎず、両方を偏りなく摂る目安として考えるとよいでしょう。

身近な食品では、納豆、アボカド、ごぼう、オクラなどは、水溶性と不溶性の両方の食物繊維を含んでいます。

さらに、野菜、豆類、きのこ、海藻、果物、穀物などを組み合わせれば、さまざまな種類の食物繊維を自然に摂ることができます。

食品ごとに「これは水溶性」「これは不溶性」と細かく分類して食べる必要はありません。

「腸に良い食品を一つ選ぶ」のではなく、いろいろな食品から、いろいろな食物繊維を摂る。

これが、毎日の食事で実践しやすい腸活の基本です。

 
食医食が大切にしていること

食医食では、健康のために特定の食品だけを食べ続けるのではなく、さまざまな食材を組み合わせて食べることを大切にしています。

腸活についても同じです。

ヨーグルトやサプリメントなど、何か一つを「腸に良いもの」として加えるだけではなく、まず毎日の食事そのものに目を向ける。

食医食が提唱してる「9品目+海藻」(卵・肉・魚・野菜・豆類・芋類・穀物・乳製品・果物・海藻)を、毎日ひと口ずつ食べることは、結果として多様な食物繊維や食品成分を摂ることにつながります。

そして、腸内環境も健康も、食事だけで決まるものではありません。

運動、睡眠、休養、ストレスなども含め、暮らし全体から考えていくことが大切です。

腸活は、特別なものを足すことより、毎日の食事を整えることから。

それが、食医食が大切にしている考え方です。

 
[参考文献]

So D, et al.
Dietary fiber intervention on gut microbiota composition in healthy adults: a systematic review and meta-analysis.
American Journal of Clinical Nutrition. 2018;107(6):965–983.
― 食物繊維と腸内細菌について。

Wastyk HC, et al.
Gut-microbiota-targeted diets modulate human immune status.
Cell. 2021;184(16):4137–4153.e14.
― 発酵食品、食物繊維と腸内細菌・免疫指標について。

Vinelli V, et al.
Effects of Dietary Fibers on Short-Chain Fatty Acids and Gut Microbiota Composition in Healthy Adults: A Systematic Review.
Nutrients. 2022;14(13):2559.
― 食物繊維、短鎖脂肪酸、腸内細菌について。

※本記事は、国内外の研究や科学的知見をもとに、食と健康について考えるための情報を紹介しています。