2026.03.10

食医食研究室|

水素水は体に良いの? ― 還元水と分子状水素の研究から考える

食医食研究室

水素水は体に良いの? ― 還元水と分子状水素の研究から考える

食や健康について、皆さんからさまざまな疑問やお悩みが寄せられます。

食医食研究室では、そんな身近な疑問をテーマに、国内外の研究や科学的知見をもとに読み解いていきます。

第一回目のテーマは、

「水素水は体に良いの?」

これは、私たちもよく聞かれる質問のひとつです。

「普通の水と何が違うの?」

「本当に健康効果はあるの?」

「市販の水素水でもいいの?」

研究から、いま分かっていることを見ていきましょう。

 
水素水って、そもそも何?

一般に「水素水」と呼ばれているのは、分子状水素(H₂)が溶け込んだ水のことです。

そのつくり方のひとつが、水を電気分解する方法です。

電気分解によって陰極側にできる水は「電解還元水」「電解水素水」などと呼ばれ、分子状水素を含んでいます。

こうした還元水の研究には長い歴史があります。

かつてはアルカリ性や酸化還元電位など、還元水が持つさまざまな性質が注目されていました。

その後、研究が進むにつれ、還元水の生物学的作用を考えるうえで、含まれている分子状水素が重要ではないかと考えられるようになりました。

分子状水素の研究が大きく注目されるきっかけのひとつとなったのが、2007年に『Nature Medicine』に発表された研究です。

この研究では、細胞や動物を用いた実験から、分子状水素が酸化ストレスによる障害を抑える可能性が報告されました。

これを契機に研究が広がり、現在では人を対象とした研究も行われています。

 
 水素水は、本当に体に良いの?

ここが一番気になるところでしょう。

2型糖尿病患者50人を対象とした多施設・二重盲検ランダム化比較試験では、電解水素水を飲んだグループで血中乳酸値の低下が確認され、その変化と血糖、インスリン、インスリン抵抗性の変化との関連が報告されました。

また、健康な成人を対象とした小規模な二重盲検試験では、水素を含むアルカリ電解水を飲むことで、ビフィズス菌の増加や便の硬さが正常な状態に近づく変化が報告されています。

このほかにも、酸化ストレスや炎症、代謝など、さまざまな観点から研究が続けられています。

では、「水素水は体に良い」と言ってよいのでしょうか?

現時点では、健康への可能性を示す研究はあるものの、「水素水を飲めば健康になる」と断言できるほど科学的根拠が確立しているわけではありません。

対象者が少ない研究や研究期間の短いものもあり、今後さらに大規模で質の高い研究を積み重ねる必要があります。

一方で、「水素水には科学的根拠がまったくない」というのも現在の研究状況とは異なります。

大切なのは、「効く・効かない」と決めつけるのではなく、可能性を示す研究がどこまで積み重なっているのかを見ること。

これが、現時点での水素水との向き合い方だと考えます。

 
どんな水素水を選べばいいの?

水素水を選ぶときに重要なのは、「水素水」という名前ではありません。

ポイントは、飲むときに分子状水素がどれくらい含まれているかです。

水素は非常に小さな分子で、水に溶けた状態のままずっと留まるわけではありません。

時間の経過や保存方法、容器によって水素濃度は低下します。

そのため、家庭用の電解水素水生成器などでつくる場合には、生成後なるべく早く飲むのが分かりやすい方法です。

では、市販の水素水は意味がないのでしょうか。

そうとは限りません。

水素を保持しやすい容器に適切に充填・保存され、飲む時点まで水素が残っている商品であれば、分子状水素を含む水として考えることができます。

市販品を選ぶ場合は、

・溶存水素濃度が表示されているか

・「製造時」だけでなく、飲用時までの濃度について情報があるか

・水素を保持しやすい容器が使われているか

・測定方法や第三者機関による検査などが確認できるか

といった点を見るとよいでしょう。

ただし、「何ppm以上なら健康効果がある」という基準が確立しているわけではありません。

高濃度であれば必ず健康効果が高くなる、ということでもありません。

「高濃度」「水素○○ppm」という数字の大きさだけで判断するのではなく、実際に飲むときまで水素が保たれているのかを見ることが大切です。

 
食医食が大切にしていること

食医食では、毎日の「水」を健康づくりの最も大切な基本として考え、長年にわたり還元水(電解水素水)を取り入れてきました。

現在では、還元水として研究されてきた水に含まれる分子状水素が注目され、その働きについてさまざまな研究が行われています。

まだ解明されていないこともありますが、食医食では、これまで積み重ねてきた知見と現在の研究成果をふまえ、還元水(電解水素水)の可能性に期待し、日々の健康づくりに取り入れる水として推奨しています。

ただし、健康は水だけでつくられるものではありません。

食事・運動・睡眠・休養など、毎日の生活習慣を整えることが大切です。

それらを支える基本として、毎日口にする水に目を向ける。

それが食医食の考え方です。

長年大切にしてきたものを、経験だけで語るのではなく、現代の科学ではどこまで明らかになっているのかを確かめ、必要であれば考え方も更新していく。

受け継いできた知恵と、進歩する科学の両方から健康を考える。

食医食研究室では、これからも新しい研究に目を向けながら、皆さんの身近な疑問を読み解いていきます。

 
[参考文献]


Ohsawa I, et al. Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nature Medicine. 2007;13:688–694.

Ogawa S, et al. Electrolyzed hydrogen-rich water for oxidative stress suppression and improvement of insulin resistance: a multicenter prospective double-blind randomized control trial. Diabetology International. 2022;13:209–219.

Tanaka Y, et al. The effects of ingestion of hydrogen-dissolved alkaline electrolyzed water on stool consistency and gut microbiota: a double-blind randomized trial. Medical Gas Research. 2021;11:138–144.

※本記事は、国内外の研究や科学的知見をもとに、食と健康について考えるための情報を紹介しています。